
天候にも左右されるが、空から注がれる光が作り出す城壁の明暗はシャープであり、立体感を際立たせる。ただ、固有色が暗めであるためそこまで劇的なコントラストは感じられない。寧ろ明度は城を支える石垣の方が高く(明るく)、まるで彫刻のような明暗をしっかりと感じることができる。
また、松本城の美しさは何といっても水面に映る明瞭な輪郭、そして天守閣の周りを時折飛び回る鳥の群れ、手前にかかる赤い橋との対比であろう。しかし私の描いた絵のように、橋を松本城の足元に大きく添える構図を狙う場合、水面に映る松本城の反射を同時に大きく収めることは難しい。
城の周りの堀の水面に映る"逆さ城"や美しい橋はこの松本城に限らず見られるだろうが、あの漆黒の城壁と赤い橋の共演はとてもアイコニックであり、独自性、象徴性の高さからこの構図を選択した。視覚的固有性が高得点なのはこのような理由からである。メインの天守閣はとても美しく、日本人として誇らしさすら覚えるが、視線の流れという観点から言うと少し物足りないかもしれない。一つの塊としてどっしり構えているが故、視線は常にその一点に注がれ、流動的な美しさにはやや欠ける。
やはり外国人観光客の割合は高く、昔のような落ち着きは今後しばらく戻ってこないように思われるが、全体の数で言えばそこまで混雑しているとは言えない状況であった。(訪問日: 2026/03/17)
堀に沿うようにしてカメラを手にした人が点在しているが、どこか一点に局在している様子はなく、比較的分散していた。ただ一つ言及するとすれば城を背景に集合写真等を撮る人たちが時々おり、そこを横切る時に一々配慮しなくてはならない。(何も気にせずズカズカ歩いて通り過ぎる人もいる)また、思っていたよりも過度に観光地化されておらず、入城料にかんしてもその歴史的重要度や展示の充実度を踏まえると妥当どころか、少し安いくらいである。昨今の過剰な観光地化の傾向を踏まえるとここはとても良心的で特に不快な感じはしなかった。
構図の自由度に関しては最早言うまでもないが、ほぼ360度どこから観ても絵になると言えるだろう。先述した要素のどれを収めたいかによって好きに場所は選択すればよい。言い忘れたが、天気が良ければ遠くにそびえるアルプスの山々を城とともに収めることもできる。構図に関するポテンシャルは非常に高く、総合評価を大きく引き上げる要因になったと言えるだろう。
見どころとしては、城を前にした鑑賞および撮影、城内の充実した展示の2点であろうか。これらの個々の充実度は極めて高く、写真が好き、歴史が好き、建築物が好きという人たちならばかなりの時間を過ごすことができると思う。最近はただ有名なモニュメントやスイーツ屋の食べ物の写真を撮った後特にすることなく次の目的地へ、というスポットが多い中、ここ松本城の充実度は極めて高いと言えるだろう。